妊婦の歯医者は何ヶ月から?歯周病治療も必要?

妊婦さんとご家族の方へ

妊婦さんになると、嬉しい気持ちと同時に色々な不安がありますよね。
特に初めてのお子さんとなると、わからないことがたくさんある上に、経験したことのない体調の変化もありますから、大変で不安なことだらけだと思います。

その不安の1つに歯科治療や歯科検診のことがあるのではないでしょうか?
このページでは妊婦さんとそのご家族の皆さまに向けて、大切なお口のことについてお話していきます。

妊娠何ヶ月から歯医者に行ったら良いの?

当院にもこの内容でよく相談を受けることがあります。実際のところは、妊娠安定期である4ヶ月〜8ヶ月ごろを推奨しています。

もちろん、安定期とあっても、つわりが続いていたり体調が安定しなかったりと個人差がありますから、ご自身の体調に合わせて受診するタイミングを見計らうのが理想的です。

妊娠中は身体はもちろん、お口の中の状況も大きく変化します。その変化によってお口のトラブルが起きやすくなりますので、できる限り体調の良い時にお越しいただくのが良いと思います。

妊娠中におきるお口のトラブル、どんなものがあるの?

妊娠中はお腹の中の赤ちゃんを育てるためにエストロゲンやプロゲステロンといった、女性ホルモンが増加します。

実はいろいろある歯周病原菌の中にこの女性ホルモンを栄養として増殖、活発化して歯肉の腫脹や出血を引き起こしてしまうことがあります。

また、つわりや体調がすぐれないことで十分にお口のケアができなくなることでその症状は悪化しやすくなります。これを「妊娠性歯肉炎」、さらに悪化すると「妊娠性歯周炎」といいます。

症状は歯周病の代表的な症状と同様で、

  • 歯肉が腫れる
  • 歯磨きしたら歯肉から出血する
  • お口の中がネバネバする
  • 口臭がする

など

このような症状がでます。
特に女性の場合は、女性特有の周期と2つの女性ホルモンの関連性があるため、男性に比べて女性の方が歯周病になりやすいと言われています。

これまで健康であったにもかかわらず妊娠中に発症してしまったり、歯周病になっている人が妊娠して歯周病の進行を早めてしまうということも少なくありません。

つわりが大変なときや妊娠後期はむし歯にも注意が必要!

つわりはとてもつらく、大変な時期です。体調によっては歯ブラシをお口に入れるのも難しい場合もあるかと思います。そうなると思うように歯ブラシでのケアが行えず歯垢が溜まってしまい、むし歯や歯周病になるきっかけとなってしまいます。これが長期間続いてしまうことでむし歯や歯周病のリスクが高まってくるのです。

また、食べづわりで食事の回数が増えてしまう、または少しずつしか食べられず食事の回数が増えてしまう、などといった、食生活の変化などもリスクが高まる原因にもなります。

もちろん、リスクが高いからといって体調の悪いなかで無理することはないのですが、食べる間隔が狭まったり、食べるものが偏ったりすることでむし歯などお口の中におきる影響を把握しておくことはとても大事なことだと思います。

さらに妊娠後期になると出産準備が忙しくなりお口のケアは後回しになりやすくなります。また、産後もお子さんのお世話でいっぱいいっぱいになり、なかなか自分のケアに時間を割くことができなくなるのもリスクが高まる原因となってしまいます。

結論としては、妊娠中、出産後はお母さんのお口の中はとてもリスクが高い時期になると言えます。大変ではありますが、それを理解した上で可能な範囲でお口のケアや対策などを行っていくことが重要です。

食事や間食の回数が多くなるとむし歯になりやすい!

むし歯のリスクを把握するのにあたって、「ステファンカーブ」という言葉を知ると理解がしやすくなります。普段食事をするとお口の環境が酸性(約ph5.5)に傾き脱灰(歯が溶ける・やわらかくなる)状態になります。
しかし食後にそれが唾液の力で中和され、歯は再石灰化(歯が硬くなる)されます。この「ステファンカーブ」はこの脱灰と再石灰化におけるphの変化の波を示したものになります。

前述したように、食事の回数が増えたり、だらだらと食事の時間が長くなったりしてしまうと、酸性から中和されてもすぐにまた酸性にお口の環境が偏ってしまうようになります。つまり、お口の中が酸性に傾いている時間が長ければ長いほど、歯が溶けやすくなり、むし歯になりやすくなると言えます。

  • 酸の多い飲食をする(レモン、炭酸、お酢など)
  • 間食のペースが増える(お口が酸性に傾く時間が長くなる)
  • 食事の回数が増える(間食のペースが増えると同様)
  • つわりにより食事内容が偏ってしまう(栄養の偏り)

など

こういったことが関係するということを知っておくと良いでしょう。

体調を見て歯磨きのタイミングを狙う!

ここまでお口のケアが大事であるということをお伝えしてきましたが、妊婦さんのつわりは本当につらくて大変です。個人差はありますが動けなくなるほど、つわりが強い人も中にはいらっしゃると思います。

そんな状況で無理やり歯ブラシを口に入れてケアをするのはとても難しいです。そんな時は無理せずに食後一度お水やお茶でうがいをしてから、体調が良くなるときを待ちましょう。もちろん、可能であれば数秒~数十秒とできる範囲で歯ブラシするのもOKです。普段通り歯ブラシできるのであればなおさら良いです。

体調が落ち着いて「今なら大丈夫!」と思った時には、こまめに磨くようにして、体調が悪くなったら無理をしない。というように自分の体調に合わせて調整し、磨ける時にしっかりと磨くようにしましょう。(特に就寝中は唾液の分泌が緩やかになり、細菌が増殖しやすい状態なので、寝る前に歯磨きができたら、最高です。)

また磨けるときはデンタルフロス(指を入れずに柄がついたものもあります。)を使うと理想的です。

安定期に入ったら一度いらしてください

4ヶ月〜8ヶ月の妊娠安定期に1度歯科医院に来ていただけると、妊娠性歯肉炎やむし歯の状況をチェックしたり、普段行き届かなかった分、お口の中をクリーニングしてフォローしたりすることができます。

また診療中もなるべくお体にストレスがかからないようにできるだけ負担が無い形で治療を行うようにします。場合によっては、妊娠中は応急処置にとどめて、出産後に治療するような方針をとることがありますので、相談しながら決めていきましょう。

妊娠中はお体や赤ちゃんへの配慮が伴うので、十分な治療がすぐに行えないこともあります。なので妊娠前、妊娠中、出産後と定期的に歯科医院にかかりお口のケア、チェックを受けていくのが一番安心・安全にお口の健康を維持していけるのではないかとも考えます。

まずはお気軽にご相談ください

現在妊娠中のお母さんは、わからないことや不安なことがたくさんあると思います。そのようなときはお気軽に当院へご相談ください。

出産・子育てを経験している歯科医師、歯科衛生士など多くいますので、お気持ちを理解しながらお話を伺います。お口のケア以外にも妊娠・出産についても一緒にお話することも可能です。少しでも参考になるお話ができたら幸いです。

ちなみに、予防先進国のスウェーデンでは【プライマリー・プライマリー・ケア】という生まれる前の「マイナス1歳」からの予防歯科を推奨しています。

お子さまがお生まれになられる前から、お母さんをはじめご家族が治療や予防歯科を始めてお口の健康を維持することが、お子さまの大切なプレゼントになる。という考え方です。

ご両親やご家族のお口の環境は、将来お子さまのお口の中へと大きく影響していきます。お子さまのお口の健康をしっかり確立するためにもこの「マイナス1歳」からの予防というのはとても大切であり多くの人に理解していただきたい内容だと思っています。

是非お母さんだけでなく、ご家族でいらしてください。
またお子さまがお生まれになられてからも、お気軽にご相談ください。
きっと、お力になれると思います。